キャリアコンサルタント試験では、近年「サビカス(Savickas)」の理論が多く出題されています。
サビカスは、変化の激しい現代社会において、人がどのようにキャリアを形成していくのかを説明する**キャリア構築理論(Career Construction Theory)**を提唱しました。
この理論の特徴は、キャリアを単なる職業選択ではなく、人生の物語として捉える点にあります。
この記事では、キャリアコンサルタント試験対策として重要な次のポイントを中心に解説します。
- キャリア構築理論の全体像
- 職業的パーソナリティ(What)
- キャリアアダプタビリティ(How)
- ライフテーマ(Why)
- ナラティブアプローチ
サビカスの理論は概念が多く難しく感じますが、「What・How・Why」の3つの視点で整理すると理解しやすくなります。
サビカスのキャリア構築理論とは

サビカス(Mark Savickas)は、現代のキャリアを説明する理論として**キャリア構築理論(Career Construction Theory)**を提唱しました。
従来のキャリア理論は、「自分に合った職業を見つける」という考え方が中心でした。
しかし、現代社会では転職や働き方の変化が一般的になり、単一の職業を前提としたキャリアモデルでは説明が難しくなっています。
そこでサビカスは、キャリアを固定されたものではなく、個人が人生の中で意味づけながら構築していくものと捉えました。
キャリア構築理論の詳細は、サビカス本人による理論的整理でも説明されています。理論の原典にあたる資料として、次のモノグラフを参照することができます。
参考文献:Mark L. Savickas, Career Construction Theory
この文献では、キャリア構築理論が職業心理学の研究成果を統合した理論体系として提示されており、キャリア行動を理解するための枠組みとして整理されています。
キャリア構築理論の全体像(What・How・Why)
サビカスは、キャリア形成を次の3つの視点から説明しています。
| 視点 | 概念 | 内容 |
|---|---|---|
| What | 職業的パーソナリティ | どのような職業に興味や適性を持つか |
| How | キャリアアダプタビリティ | キャリア課題にどのように対応していくか |
| Why | ライフテーマ | なぜその仕事を選ぶのかという人生の意味 |
What(職業的パーソナリティ) は、人がどのような興味や価値観、性格特性を持っているかという側面です。これはホランドの職業選択理論などにも見られる考え方で、人の興味や適性が職業選択に影響を与えるという視点を示しています。
How(キャリアアダプタビリティ) は、変化の多い社会の中でキャリア課題にどのように対応していくかという能力を指します。転職やキャリアの転機などに直面したときに、将来を考え、主体的に行動し、探索しながら自信を持って対応していく力がここに含まれます。
Why(ライフテーマ) は、その人が仕事を通してどのような人生の意味や価値を実現しようとしているのかという視点です。過去の経験や価値観、人生の物語が職業選択に影響を与えると考えられています。
サビカスは、キャリアを理解するためには「どんな職業に興味があるのか(What)」だけでなく、「変化にどう対応するのか(How)」、さらに「なぜその仕事を選ぶのか(Why)」という3つの視点を統合して考えることが重要だと述べています。
職業的パーソナリティ(What)
職業的パーソナリティとは
職業的パーソナリティとは、個人の興味・価値観・性格などの心理的特性が職業選択に影響を与えるという考え方です。
人はそれぞれ異なる関心や価値観、行動傾向を持っており、その特徴に合った職業や仕事環境を選ぶ傾向があります。例えば、人と関わることを好む人は対人援助職に興味を持ちやすく、分析や研究に関心のある人は専門職や研究職に関心を持つことがあります。
このように、個人の特性と職業環境との適合によって職業選択が説明できるという視点が、職業的パーソナリティの基本的な考え方です。
ホランド理論(RIASEC)との関係
サビカスの理論は、ホランドの職業選択理論を土台にしています。
これは先ほど紹介した論文からも根拠を見出すことができます。
Mark L. Savickas, Career Construction Theory
ホランドは、人の職業的興味を次の6つのタイプに分類しました。
| タイプ | 特徴 |
|---|---|
| R:現実型(Realistic) | 機械操作・ものづくり・身体活動を好む |
| I:研究型(Investigative) | 分析・研究・問題解決を好む |
| A:芸術型(Artistic) | 創造的活動・表現活動を好む |
| S:社会型(Social) | 人を支援する仕事を好む |
| E:企業型(Enterprising) | 営業・企画・リーダーシップを好む |
| C:慣習型(Conventional) | 事務・整理・管理を好む |
これらはRIASECモデルと呼ばれ、職業選択の基礎理論として広く知られています。
サビカスは、このような**職業的興味の傾向(What)**をキャリア理解の一つの要素として取り入れました。
▶ホランドの職業選択理論をわかりやすく解説|RIASEC・スリーレターコード・VPI職業興味検査
キャリアアダプタビリティ(How)
キャリア構築理論の中で、特に重要な概念が**キャリアアダプタビリティ(Career Adaptability)**です。
キャリアアダプタビリティとは
キャリアアダプタビリティとは、変化する社会の中でキャリア課題に柔軟に対応するための心理的資源を指します。
現代のキャリアでは、転職や職種の変化、働き方の多様化など、さまざまなキャリア上の転機に直面することがあります。こうした状況の中で、自分のキャリアを主体的に考え、必要な行動をとりながら課題に対応していく力が求められます。
サビカスは、このようなキャリア課題への対応力をキャリアアダプタビリティと呼び、個人がキャリアを構築していくうえで重要な心理的資源として位置づけました。
そして、このキャリアアダプタビリティは、次に説明する**4つの要素(4C)**によって構成されるとされています。
キャリアアダプタビリティの4C
サビカスは、キャリアアダプタビリティを次の**4つの要素(4C)**で説明しました。
| 概念 | 意味 | 具体的内容 |
|---|---|---|
| Concern | 関心 | 将来のキャリアについて考え、準備しようとする姿勢 |
| Control | 統制 | 自分のキャリアを主体的に選択しようとする意識 |
| Curiosity | 好奇心 | さまざまな職業や可能性を探索する姿勢 |
| Confidence | 自信 | 困難な状況でもキャリア課題に対処できるという自信 |
**Concern(関心)**は、将来のキャリアに目を向け、長期的な視点で準備をしようとする姿勢を指します。自分の将来について考えたり、キャリアの方向性を意識することがこの要素にあたります。
**Control(統制)**は、自分のキャリアを他者任せにするのではなく、主体的に選択していこうとする意識です。キャリアの意思決定に責任を持ち、自ら行動していく姿勢が含まれます。
**Curiosity(好奇心)**は、さまざまな職業や働き方に関心を持ち、情報を集めたり経験を通して可能性を探ろうとする姿勢です。職業探索や自己理解を深める行動につながります。
**Confidence(自信)**は、キャリア上の困難や課題に直面しても、自分にはそれを乗り越える力があると信じて行動できる感覚を指します。問題解決に取り組む際の自己効力感とも関係する要素です。
このようにキャリアアダプタビリティは、将来を考える力、主体的に選択する力、可能性を探る力、困難に対処する力という4つの心理的資源によって構成されていると考えられています。

ライフテーマ(Why)
ライフテーマとは
ライフテーマとは、
人生における意味や価値観が、どのようにキャリアに表れるか
という考え方です。
キャリア構築インタビュー(CCI)
ライフテーマを明らかにするために用いられる方法が、**キャリア構築インタビュー(CCI)**です。
代表的な質問には次のようなものがあります。
1 尊敬する人物
2 好きな雑誌・テレビ
3 好きな物語
4 座右の銘
5 幼少期の思い出
これらの質問を通して、クライエントの人生の物語を探り、キャリアの意味を理解していきます。
ナラティブアプローチと社会構成主義
サビカスの理論の背景には、社会構成主義という考え方があります。
社会構成主義では、人の現実や意味は固定されたものではなく、社会や言語、経験の中で作られていくものと考えます。
この考え方をもとに発展したのがナラティブアプローチです。
ナラティブとは
ナラティブとは「物語」を意味し、人は自分の人生を物語として語りながら意味づけていると考えられます。
このナラティブアプローチは、マイケル・ホワイトやデイビッド・エプストンによって発展しました。
ドミナントストーリーとオルタナティブストーリー
ナラティブアプローチでは、人が語る人生の物語を次のように捉えます。
| 概念 | 内容 |
|---|---|
| ドミナントストーリー | 問題によって支配された物語 |
| オルタナティブストーリー | 新しい可能性を含む物語 |
例えば、ある人が次のように語ったとします。
「自分は失敗ばかりする人間だ」
この語りは、過去の失敗経験によって作られたドミナントストーリーです。
このような語りは、本人の可能性を狭めてしまうことがあります。
キャリア支援では、その人の経験を丁寧に振り返りながら、別の視点から物語を再構築していきます。
例えば次のような問いかけを行います。
- その経験から学んだことは何ですか?
- 失敗を乗り越えた経験はありませんか?
- 周囲の人はあなたのどんな点を評価していますか?
すると、クライエントは次のような語りに変化することがあります。
「確かに失敗も多かったが、その経験から問題の原因を分析する力が身についた」
このように、新しい意味づけによって生まれる物語がオルタナティブストーリーです。
キャリア支援では、このような物語の再構築を通して、クライエントが自分のキャリアを新しい視点で捉え直すことを支援します。
キャリアコンサルタント試験の出題例
キャリアコンサルタント試験では、サビカス理論は次のような形で出題されることがあります。
出題例①
次のうち、サビカスのキャリアアダプタビリティに含まれる要素として最も不適切なものはどれか。
→ 4Cを問う問題
出題例②
サビカスのキャリア構築理論におけるキャリアアダプタビリティとは何か。
→ 概念理解を問う問題
出題例③
キャリア構築インタビューに関する説明として適切なものを選べ。
→ CCIの理解を問う問題
このように、
- キャリアアダプタビリティ(4C)
- キャリア構築インタビュー
- キャリア構築理論の概念
が過去何度も出題されています。
まとめ
サビカスのキャリア構築理論は、現代のキャリアを理解するうえで重要な理論です。
この理論では、キャリア形成を次の3つの視点から捉えます。
- What:職業的パーソナリティ
- How:キャリアアダプタビリティ
- Why:ライフテーマ
さらに、ナラティブアプローチの考え方を取り入れ、人生の物語を通してキャリアの意味を理解していきます。
変化の激しい現代社会において、キャリアは固定されたものではなく、個人が意味づけながら構築していくものであるという視点が、サビカス理論の大きな特徴です。
※キャリアコンサルタント試験では、多くの理論家が出題範囲となります。
試験に登場する理論家を体系的に整理した記事はこちらです。是非ご活用ください。
▶ キャリアコンサルタント理論家一覧(頻出度順・理解度チェックテスト付き)





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