キャリアコンサルタント試験で頻出の理論の一つが、エドガー・シャイン(Edgar H. Schein)のキャリアアンカー理論です。
キャリアアンカーとは、仕事やキャリアを選択する際に「これだけは譲れない」と感じる価値観や欲求のことを指します。
人は職業経験を重ねる中で、自分の能力や動機、価値観を理解していきます。その結果として、自分のキャリア選択の軸となるものが形成されます。
この記事では、シャインのキャリア理論について次のポイントを中心に解説します。
- キャリアアンカーとは何か
- キャリアアンカー8つのタイプ
- 外的キャリアと内的キャリア
- キャリアサイクル(10段階)
- キャリア・サバイバル
- 厚生労働省の無料診断
キャリアコンサルタント試験対策としても重要な理論なので、全体像を整理しながら理解していきましょう。
キャリアアンカーとは(シャインの理論)
キャリアアンカーとは、個人がキャリア選択を行う際に最も重視する価値観や動機の中心を意味します。
「アンカー(Anchor)」とは船の錨(いかり)のことです。船が錨によって一定の場所に留まるように、人のキャリアもまた、強い価値観によって方向性が定まるという意味からこの名称が用いられています。
シャインは、キャリアアンカーは次のような要素が統合されることで形成されると考えました。
- 自分の得意な能力
- 仕事に対する動機や欲求
- 人生において大切にしている価値観
これらが職業経験を通して明確になり、やがて「自分はどのような働き方を望むのか」というキャリアの軸が形成されます。
シャインのキャリアアンカー8つ
シャインは、キャリアに関する価値観を8つのタイプに分類しました。
| キャリアアンカー | 特徴 |
|---|---|
| 専門・職能別コンピタンス | 特定分野の専門性を高めることに価値を見出すタイプ。専門知識や技術を磨き、専門家として能力を発揮することに満足感を得る。 |
| 全般管理コンピタンス | 組織全体を統括し、意思決定やマネジメントを担うことにやりがいを感じるタイプ。組織を動かし成果を上げることに価値を置く。 |
| 自律・独立 | 組織の制約に縛られず、自分の裁量で仕事を進めることを重視するタイプ。働き方の自由度や意思決定の自律性を求める。 |
| 安全・安定 | 雇用や生活の安定を重視するタイプ。長期的に安心して働ける環境や将来の見通しが立つキャリアを望む傾向がある。 |
| 起業家的創造性 | 新しい事業や仕組みを生み出すことに価値を見出すタイプ。自らアイデアを形にし、組織や事業を創り出すことにやりがいを感じる。 |
| 奉仕・社会貢献 | 社会的な課題の解決や他者への貢献に価値を置くタイプ。仕事を通じて社会の役に立つことに強い動機を持つ。 |
| 純粋な挑戦 | 困難な課題や競争を乗り越えること自体に魅力を感じるタイプ。問題解決や挑戦的な状況に取り組むことがモチベーションになる。 |
| ライフスタイル | 仕事だけでなく、家庭や趣味など人生全体のバランスを重視するタイプ。働き方と生活の調和を大切にする。 |
キャリアアンカーはどのように形成されるか
キャリアアンカーは、次の3つの要素が統合されることで形成されます。
- 能力(Talents):自分には何ができるか、得意か
- 動機・欲求(Motives):何をしたいか、仕事に何を求めるか
- 価値観(Values):どんなことをしている自分に価値を見出すか
職業経験を通して、自分の得意なことや興味関心、仕事に求める意味が徐々に明確になります。その結果、どのようなキャリアを選ぶかの判断軸が形成されていきます。
シャインのキャリア理論(試験頻出)
シャインはキャリアアンカーだけでなく、キャリアを理解するためのいくつかの重要な概念を提唱しています。
外的キャリアと内的キャリア
シャインはキャリアを理解するために、外的キャリアと内的キャリアという2つの視点を区別しました。
外的キャリアとは、周囲から客観的に確認できるキャリアの側面を指します。職位や役職、給与、職歴など、組織や社会の中で評価されるキャリアの形です。例えば、企業で昇進して管理職になることや、長年同じ企業で経験を積み専門性を高めていくことなどは外的キャリアの変化として捉えられます。
シャインは、この外的キャリアの発展を説明する概念としてキャリアコーン(Career Cone)を示しました。キャリアコーンとは、組織の中でキャリアが進むにつれて役割や責任の範囲が広がっていく様子を円錐(コーン)の形で表したものです。
一方、内的キャリアとは、本人が主観的に感じているキャリアの意味や満足感を指します。仕事を通じて成長していると感じるか、自分の価値観に合った仕事をしていると感じるかといった心理的な側面がこれにあたります。たとえ外的には昇進していたとしても、本人が望まない役割であれば内的キャリアの満足度は低くなる可能性があります。
キャリアコンサルティングでは、この内的キャリアの理解が重要とされています。外的な成功だけでなく、本人がどのような価値観や動機を持っているのかを理解することが、納得感のあるキャリア支援につながるためです。
キャリア・サバイバル
キャリア・サバイバルとは、変化する環境の中で組織の一員として働き続けるための適応能力を指します。
組織や社会の状況は常に変化しており、個人はその変化に対応しながら自分の役割を維持していく必要があります。新しい技術を学び続けることや、組織の方針の変化に適応すること、周囲と協働しながら成果を生み出すことなどがその具体例です。
このような行動を通して、個人は組織の中で必要とされる存在となり、結果としてキャリアを継続することが可能になります。キャリア・サバイバルは単なる「生き残り」ではなく、変化する環境の中で自分の価値を維持し続けるプロセスとして理解することが重要です。
キャリアサイクル(10段階)
シャインは、キャリアが人生の中で段階的に発達していくプロセスをキャリアサイクルとして説明しました。
| 段階 | 内容 |
|---|---|
| 成長・空想・探索 | 将来の仕事に関心を持ち、さまざまな職業を想像する段階 |
| 教育・訓練 | 学校教育や職業訓練を通して職業能力を身につける段階 |
| 就職・組織参入 | 初めて職業に就き、組織の一員として働き始める段階 |
| 基礎訓練 | 組織の中で仕事の基本を学び、職務に適応していく段階 |
| 初期キャリア | 実務経験を積みながら自分の能力や適性を理解する段階 |
| 中期キャリア | 職務が安定し、専門性や責任の範囲が広がる段階 |
| キャリア危機 | 自分のキャリアの方向性を見直す転機となる段階 |
| 後期キャリア | 経験を活かして組織に貢献し、指導的役割を担う段階 |
| 引退準備 | 将来の引退や働き方の変化を意識する段階 |
| 引退 | 組織から離れ、新しい生活段階へ移行する |
キャリアアンカーの無料診断(厚生労働省)
シャインの最重要理論であるキャリアアンカー。
様々なツールがありますが、厚生労働省が提供しているツールでも簡単に確認することができます。
この診断では質問に回答することで、自分がどのようなキャリア価値観を持っているのかを確認できます。
診断で分かること
この診断ではあなたのキャリアアンカー、つまり次のようなことを確認できます。
- 自分が大切にしているキャリア価値観
- 向いている働き方の傾向
- キャリア選択の判断軸
マイジョブカードは試験でも頻出です。5分もあれば実施できますので、記憶の定着という意味でも実際に自分で体感してみてください。
まとめ
シャインのキャリアアンカー理論は、キャリア選択における価値観を理解するための重要な理論です。
ポイントを整理すると次の通りです。
- キャリアアンカーはキャリアの価値観の中心
- 8つのタイプに分類される
- 能力・動機・価値観の統合によって形成される
- キャリアには外的キャリアと内的キャリアがある
キャリアコンサルタント試験でも頻出のテーマなので、8つのアンカーと基本概念を整理して理解しておきましょう。
※キャリアコンサルタント試験では、多くの理論家が出題範囲となります。
試験に登場する理論家を体系的に整理した記事はこちらです。是非ご活用ください。
▶ キャリアコンサルタント理論家一覧(頻出度順・理解度チェックテスト付き)




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